日本財団 図書館


 

は、罰則の適用による間接的強制力により義務の履行を図るわけであるが、無許可施設等に対する措置命令違反などの場合には、危険性が著しく高い状況が考えられ、行政代執行による直接強制により、行政庁が直接に無許可貯蔵されている危険物を排除し、保安の確保を図ることもある。なお、危険物施設の基準適合命令のように、法が次に取るべき措置として使用停止命令を定めている場合には、使用停止命令を行い、なおかつ履行されないときに罰則が適用されることとなる。
二、 貯蔵取扱に関する命令
危険物施設における危険物の貯蔵取扱は、消防法第一〇条第三項により危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に従い行うことが義務づけられている。この規定に違反した場合には、罰則の適用があるが、違反した行為者に対して適用されるほか、行為者の属する法人又は法人の代表者等に対してもその監督責任に対し罰則の適用がある。しかし、基準遵守義務は罰則の適用による間接的な強制力によってだけでは義務の履行を確保することが難しい面もあり、そこで、法は市町村長等に対し危険物の貯蔵取扱に関する命令権限を与え、危険物施設の保安を確保することとしている。
(一)危険物の貯蔵、取扱に関する命令
消防法第一一条の五第一項は、移動タンク貯蔵所を除く危険物製造所等に対する市町村長等の命令権限を定めたものであるが、この命令に違反した時は、さらに使用停止命令をかけることにより、保安の確保を図ることができる。
(二)移動タンク貯蔵所に対する命令
昭和六〇年五月に発生した東京都目黒区柿の木坂交差点におけるタンクローリーの横転炎上事故は、社会的に危険物事故の恐ろしさを強く印象づけると共に危険物施設に対する市町村長等の命令権限を定めた法の規定が、移動タンク貯蔵所に関しては一部実情にあわぬ部分のあることが明らかになった。
このため、昭和六一年四月の法改正により消防法第二条の五第二項並びに第三項、及び消防法第一六条の三第四項が追加され、市町村長はその管轄する区域にある移動タンク貯蔵所に対する危険物の貯蔵取扱に関する命令権限と事故時の応急措置命令権を有することとなった。
これにより、A市で設置許可を受けている移動タンク貯蔵所がB市で流出事故等を起こした場合に、事故現場であるB市の市長にはその移動タンク貯蔵所に対する命令権限が存しないという不合理は解消された。
なお、この命令に違反した場合には使用停止命令の対象となるが、使用停止命令の命令権者は当該移動タンク貯蔵所の所在地を管轄する市町村長等にある点に注意を要する。
三、 基準連合命令
消防法第一二条第一項に定める基準維持義務を担保するため基準適合命令が規定されている。すなわち、市町村長等は危険物施設の位置、構造又は設備が基準に適合していないと認めるときは、危険物施設の所有者等で権原を有するものに対し、基準に適合するように当該施設を修理し、改造し、又は移転することを命じることができる。
(一)命令の客体
この命令には客体が限定されており、それは所有者等であって危険物施設に対し権原を有する者である。したがって、市町村長等はこの命令を発するに当たって命令の内容を実現しうる権原を有する相手方を選択する必要がある。
(二)命令の内容
命令の内容は、危険物施設の修理、改

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION